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採択課題 【詳細】

EX24506 星形成理論構築に向けたフィラメント状分子雲の進化過程の研究
課題代表者 安部 大晟(東北大学)
概要

星は分子雲中の高密度領域で形成されるがその高密度領域がフィラメント状であることや (e.g., André et al. 2010)、分子雲を通過する衝撃波が そのフィラメントの形成を誘発することがわかっている (e.g., Inoue & Fukui 2013; Abe et al. 2021)。フィラメントは、その形成機構を鑑みると磁場に沿ったガス流によって進化する。フィラメント進化過程で決まるであろうフィラメントの幅はフィラメントの幅は星形成開始条件や星の質量を決めうる重要な量である (Tomisaka 2014; Inutsuka & Miyama 1997)。観測からフィラメントの幅は線質量密度によらず 0.1 pc であることがわかっている(e.g., Arzoumanian et al. 2019)。ところが理論的には、1 pc あたり17太陽質量以上のフィラメントでは重力収縮を止められず潰れるはずであり、観測事実と矛盾する。フィラメント境界は多くの場合「スローショック」になると考えられる。スローショックの波面は不安定であり (Lessen & Deshpande 1967; Edelman 1989)、フィラメント内に乱流を駆動し重力収縮を遅らせるための運動エネルギー供給が期待される。またフィラメントのスケールでは両極性拡散が効くためこれを考慮に入れる必要がある。

本研究ではフィラメントの幅の普遍性を説明することを目標とし、まず両極性拡散入りのスローショック不安定性で乱流生成が起こるかをAthena++ (Stone et al. 2020) を用いた二次元非理想MHDシミュレーションにより調べた。両極性拡散入りのスローショック不安定性の非線形発展の結果、乱流が駆動されることを発見した。さらに自己重力入りの三次元シミュレーションも行った。その結果1 pc あたり約70太陽質量の大質量フィラメントに対し、幅 0.06 pc であり観測事実と整合的であった。両極性拡散入りのスローショック不安定性によって駆動された乱流圧が幅の維持を実現することを提案する。

報告書等 研究紹介ポスター / 最終報告書
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