採択課題 【詳細】
EX24208 | 3次元フェーズフィールド法とデータ同化によるがんオルガノイドの細胞力学モデル |
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課題代表者 | 今井 正幸(東北大学 理学研究科) |
概要 |
がんは治療が難しい疾患であり、現在の医療手法ではしばしば個々の患者に合わせた治療法を提供することができない。この問題に対処するために、個々のがん細胞の遺伝的構成を解析し、最も効果的な治療法を選択する個別化医療が進展している。この分野で新たに注目されているのは、患者特有の遺伝的変異を反映したがんオルガノイドの使用である。これらのオルガノイドはがん細胞のクラスターであり、診断目的で発現している遺伝子との相関を用いることができるが、形態形成を支配する因子の理解が不足しているため、信頼できる定量的診断への応用が困難である。これを解決するために、がんオルガノイドの培養観察と形態変化の数値シミュレーションによって、形態変化を支配する力学的過程を明らかにすることを試みる。我々の数値シミュレーションでは、オルガノイドの形態が皮質張力、細胞の増殖速度、内腔の圧力差によって時間と共に自己組織化することが示唆されている。これらの物理・化学的変数を遺伝子変異のデータと結びつけることで、がん診断に大きく寄与できると考えられる。したがって、数値シミュレーションを用いて患者ごとの遺伝子の違いを予測し、臨床での診断・治療に役立てることが目標であり、病理学と物理学を統合する新しい学際的な分野の開拓がこのプロジェクトの出発点となる。 前年度には、がんオルガノイドの形態を制御する力学的因子を明らかにするために、3次元フェーズフィールドモデルの開発に取り組んだ。今年度の目標は、実験で観察されたがんオルガノイドの形態を再現するモデルパラメータを逆推定するためのデータ同化手法の開発である。この手法では、実験データを再現するもっともらしいモデルパラメータ(事後分布)を推定するために、アンサンブル4次元変分法(En4DVar)を用いて事前分布と観測誤差を最小化する。この計算アルゴリズムを使用して、正解のモデルパラメータが既知のデータを対象にした双子実験でデータ同化の精度を検証し、次に実際のがんオルガノイドの画像データに適用し、モデルパラメータの推定と精度を検証する。 |
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