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採択課題 【詳細】

jh240034 2(+1)フレーバー格子QCDによる複合粒子の質量生成機構の研究
課題代表者 関口宗男(国士舘大学理工学部理工学科基礎理学系)
Motoo Sekiguchi (Kokushikan University, School of Sience and Engineering)
概要

物質の質量のほとんどは、原子核を構成する核子(陽子、中性子)によるものである。核子は、さらに下の階層であるuクォークとクォークから構成されていて、核子の質量はuクォークとクォークが強い相互作用により束縛されている状態での質量(構成子質量)に由来すると考えられている。u,dクォークの構成子質量はヒッグス機構に由来する部分が僅かにあるが、大部分は強い相互作用のカイラル対称性の自発的破れにより獲得されると考えられている。これらについては、有効理論により定性的に理解されているが、強い相互作用(束縛力として、SU(3)ゲージ相互作用を考える)の第1原理である量子色力学(QCD)による定量的な説明はまだできていない。定性的には、u,dクォークが質量を獲得すると同時にクォーク・反クォークから構成されるπ中間子とσ中間子、ρ中間子とa1中間子(これらの中間子の対はカイラル・パートナーと呼ばれる)も質量を獲得すると考えられているが、これらカイラル・パートナー中間子の質量を強い相互作用の第一原理であるQCDを非摂動論的に計算することによって求められることを実証する。そのために、時空間を離散化した格子状にしてQCDを定義した理論が格子QCDである。4次元時空間を格子化する際にヒッグス機構とは別の原因でカイラル対称性が失われるが、5次元自由度を導入することにより格子上でカイラル対称性を実できる。本研究では、特にアイソスカラー・スカラー粒子であるσ中間子の性質及び、質量の生成機構で果たす役割を格子QCDから明らかにすることを目標としている。さらに有効理論によると、カイラル相転移が起こる温度(臨界温度と呼ぶ)付近でカイラル対称性が部分的に回復し、カイラル・パートナーの中間子質量は縮退すると予想されている。この現象を格子QCDによる大規模シミュレーションで再現することを目標とする。さらに、暗黒物質(ダークマター)の探索および、その質量を特定する観測が盛んになってきている。ダークマターの質量生成メカニズムに関してQCDに似たSU(N)ゲージ相互作用を考えるモデルが提案されている中、我々の研究がダークマターの質量生成メカニズムの解明にも役立つことが分かってきた。ダークマターがSUNカラー相互作用をするダーククォークから構成されるとする模型を構築し、ダークマターの質量スペクトルを計算することで、全く理解できていないダークマターの質量の起源を明らかにする。

 

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