学際大規模情報基盤共同利用・共同研究拠点

採択課題 【詳細】

jh240017 グラフ構造で一般化された静的負荷分散フレームワークに基づくマルチスケールシミュレータの開発
課題代表者 森田直樹(筑波大学システム情報系)
Naoki Morita (Faculty of Engineering, Information and Systems, University of Tsukuba)
概要

持続可能な社会の実現に向けて、我が国でも 2050 年までにゼロエミッションを達成するとの宣言がなされ、例えば輸送機器分野では CO2 排出量削減が喫緊の課題となっている。この解決には躯体の軽量化が効果的であり、高比強度・比剛性への期待から、炭素繊維強化プラスチックに代表される複合材料の強度部材への利用が期待されている。

複合材料の強度評価は、炭素繊維と樹脂を区分するミクロ構造および部材全体のマクロ構造の両者における精緻な応力・ひずみの評価が重要となる。時間と費用を要する実験的強度評価手法の代替を目的に、数値シミュレーションによる定量的強度評価に期待が寄せられている。一方、マクロな全体構造にわたってミクロ構造を直接解像することは計算量・データ量の観点から現実的ではない。本研究で対象とするシミュレーション手法は、ミクロ構造が周期的であるという仮定の元、マクロ構造・ミクロ構造それぞれで連立一次方程式の求解を必要とする。ミクロ構造は全体構造に複数設定した評価点(有限要素法における全ての積分点に相当)で平均的な材料特性を取得する。詳細な強度評価のため、マクロ構造およびミクロ構造の双方で精緻なシミュレーションの必要性が高まっており、計算時間・メモリ容量の実用的観点からマルチスケールシミュレータの並列化が課題となる。

マルチスケールシミュレータの並列化にあたっては、積層構成や繊維含有率、材料分布の違いから、全体構造に割り当てられるミクロ構造の種類が異なる場合が想定される。例えば積層ごとに異なるミクロ構造を有する場合、応力解析に要する計算時間は均一ではない。そのためマクロ構造を単純にデータ分割すると、ミクロ構造の計算時間の不均一性が起因となって並列計算性能が低下する。その他、ミクロ構造の材料特性に非線形性を考慮する場合も同様であり、全体構造に局所的にひずみ集中が生じた場合、その部分に対応するミクロ構造の応力解析は、その他部分の応力解析よりも計算時間が長くなる。

効率的な並列計算を実現するためには、ミクロ構造の計算時間の不均一性を考慮した負荷分散が必要になる。またマルチスケールシミュレーションでは、全体構造・ミクロ構造を解像するメッシュ情報のみならず、ミクロ構造の周期性を表現する周期境界条件の情報を取り扱う必要があり、メッシュ情報のみでは負荷分散が実現できない。そのため、グラフ情報に変換・一般化させた負荷分散フレームワークの利用が必要となる。

以上より本研究では、これまでの成果である負荷分散フレームワークを開発基盤とし、マルチスケールシミュレータに向けた負荷分散フレームワークの高度化と、並列マルチスケールシミュレータの開発および並列計算性能評価を目的とする。


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