学際大規模情報基盤共同利用・共同研究拠点

採択課題 【詳細】

jh230030 格子QCDによる複合スカラー粒子の質量生成機構の研究
課題代表者 関口宗男(国士舘大学理工学部)
Motoo Sekiguchi (Kokushikan University, School of Sience and Engineering)
概要

本研究では強い相互作用の第一原理である量子色力学(QCD)を非摂動論的に計算する。この計算を実現する手法として、時空間を離散化した格子上にQCDを定義した理論が格子QCDである。強い相互作用の有効理論によると、構成子としてのクォークの質量は真空で強い相互作用のカイラル対称性の自発的破れにより獲得されると考えられている。クォークが質量を獲得すると同時にクォーク・反クォークから構成されるπ中間子とσ中間子、ρ中間子とa1中間子(これらの中間子の対はカイラル・パートナーと呼ばれる)も質量を獲得する。カイラル対称性の自発的破れはQCD真空の相転移であり、カイラル相転移と呼ばれ、宇宙の温度がビッグバン直後の超高温状態から温度が下がる過程で起きたと考えられている。本研究では、特にアイソスカラー・スカラー粒子であるσ中間子の性質及び、質量の生成機構で果たす役割を格子QCDから明らかにすることを目標としている。さらに有効理論によると、カイラル相転移が起こる温度(臨界温度と呼ぶ)付近でカイラル対称性が部分的に回復し、カイラル・パートナーの中間子質量は縮退すると予想されている。この現象を格子QCDによる大規模シミュレーションで再現することを目標とする。このテーマは宇宙創成のメカニズムを解き明かすことにつながる重要な研究課題である。研究目標を達成するには現状のスーパーコンピュータの性能を限界まで活用する必要がある。σ中間子の真空での性質を明らかにするためのコード開発とシミュレーションを実施し、並行してフルQCDによる有限温度のシミュレーションを実現するために研究も進めていく。また、暗黒物質(ダークマター)の質量生成メカニズムに関してQCDに似たSU(N)ゲージ相互作用を考えダークマターを複合粒子(ダークハドロン)として考えるモデルが提案されている。我々の研究がダークマターの質量生成メカニズムの解明にも役立つ可能性がある。このダークハドロンは、通常の意味での電荷は持っていないが、π中間子、ρ中間子、a1中間子、σ中間子のような性質を持つ複合粒子が存在する。今年度からはダークハドロンの質量生成メカニズムの解明も検討する。

報告書等 研究紹介ポスター / 最終報告書
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