学際大規模情報基盤共同利用・共同研究拠点

採択課題 【詳細】

jh220030 超高解像度の即時予測の実現に向けた都市街区内風況データベースの構築
課題代表者 小野寺直幸(国立研究開発法人日本原子力研究開発機構・システム計算科学センター)
Naoyuki Onodera
概要

デジタルツインに基づく風況予測は、都市街区内の歩行者に対する熱中症評価や微小粒子状物質の拡散予測などスマートシティ設計・運用に応用できるだけでなく、小型無人機利用に向けた突風予測等の新たな社会基盤構築に貢献できる技術である。風況デジタルツインの実現には、都市全域を含む広域な気象場から建物や樹木等を捉えたマルチスケール乱流解析のための大規模計算技術に加えて、高密度の観測値をシミュレーション内に反映するデータ同化技術が不可欠である。しかしながら、建物や路地を反映した1m解像度のリアルタイムシミュレーションはこれまで未確立であり、これが風況デジタルツインの構築を困難としてきた。本研究では、飛躍的に計算性能が向上してきたGPUスパコンを駆使したCityLBMを独自開発することで、この長年の重要課題を解決した[1]。本課題では、これに観測システム[2]とメソスケール気象モデル[3]とのデータ同化技術を組み合わせて風況デジタルツインを構築し、詳細な3次元風況分布の実時間再構成を実現する。これにより、様々な路地や航路の風況をリアルタイムあるいは数10秒先まで評価する。さらに、より高速な低解像度シミュレーションに深層学習による超解像技術を組み合わせることで数分先の3次元風況分布の即時予測の実現を目指す。以上の研究目標に対して、FY2022は観測とメソスケール気象データとのデータ同化に基づく風況シミュレーションによる詳細な3次元風況分布の再構成技術を開発する。本研究プロジェクトは計算科学を専門とするJAEA、都市風況観測を専門とする東工大・防災科研の学際的な実施体制を構築し、さらにJHPCNおよびmdxが提供している高速な計算資源およびネットワークを利用することで初めて実現できる。

参考文献:

1. N. Onodera, Y. Idomura, Y. Hasegawa et al., “Real-time tracer dispersion simulation in Oklahoma City using locally mesh-refined lattice Boltzmann method”, Boundary-Layer Meteorology, 179, 187–208 (2021) 

2. A. Yagi, A. Inagaki, M. Kanda, et al., “Nature of Streaky Structures Observed with a Doppler Lidar”, Boundary-Layer Meteorol 163, 19–40 (2017) 

3. K. Shimose, S. Shimizu, et al., “Analysis of the 6 September 2015 tornadic storm around the Tokyo Metropolitan area using coupled 3DVAR and incremental analysis updates”, J. Disaster Res., 12, 956-966, (2017) 

報告書等 研究紹介ポスター 最終報告書
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