学際大規模情報基盤共同利用・共同研究拠点

採択課題 【詳細】

EX23208 リカレント型ビット演算による縦渦挙動のマルチスケール創発解析
課題代表者 松岡 浩(技術士事務所 AIコンピューティングラボ)
概要

「リカレント型ビット演算による縦渦挙動のマルチスケール創発解析(EX23208)の要旨

“縦渦”は時として非常に遠方まで伝わり、ものづくり流体設計で重要な関心事になる。航空機の主翼両端から発生する縦渦は燃料の過剰消費につながり、船舶の船首で発生した1対の縦渦は船尾にあるプロペラに到達して損傷の原因になる。また、“縦渦”の発生を風力発電に利用する“円柱翼縦渦風車”の研究開発もなされている。最近では、特に、2050年のカーボンニュートラル実現を目指して、大規模な風力発電ファームの設置が推進されており、このような流体工学設計では、縦渦の発生予測とその制御がますます重要な課題になっている。

以上の状況に鑑み、本研究では「縦渦の成長過程を高解像度で模擬し、適応制御に利用しうる高速な計算法を考案すること」を目的とした。

本研究では、多数の仮想粒子の挙動を平均してマクロな流体挙動を得る“格子ガス法”を用いる。特に、C. M. Teixeiraが考案した高精度な“4次元面心超立方体格子”による54速度モデルを採用し、これを改良する。格子ガス法には、ビット演算を用いて、時間発展計算を誤差の蓄積なく超並列計算でコンパクトに実行できるという強力なメリットがある(例:ベクトルプロセッサ1チップでも、10万個を超える格子点に関する並列計算を実行可能)。しかし、「低粘性な流体になるほど、その模擬に必要な格子点数が膨大になる」という弱点が存在するため、縦渦をはじめとする乱流状態の解析には不向きとされていた。

本研究では、この弱点を克服するため、「衝突散乱後の仮想粒子が1時刻前の出発粒子と同じ向きに出発する確率(←以下、“連行確率”)を意図的に高める」という方法を考案し、格子点数を増やさずに、低粘性の発現を可能にしようとている。このため、“連行確率”を変化させて、円柱後流における縦渦挙動を観察し、粘性の低下により高Re数状態の挙動が出現することを定性的に確認した。

なお、本計算には、東北大学サイバーサイエンスセンターのベクトル計算機AOBA-Aを利用した。

報告書等 研究紹介ポスター / 最終報告書
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