学際大規模情報基盤共同利用・共同研究拠点

採択課題 【詳細】

EX22307 南極沿岸の棚氷の融解を促進するメカニズムの解明
課題代表者 松田 拓朗(北海道大学 低温科学研究所)
概要

 南極の棚氷の底面融解の理解に向けて、理想化したチャネルモデルを用いて南大洋の熱循環を調べた。20世紀中盤以降、人為起源のガスによって大気の循環が変わり、南大洋を駆動する偏西風が強化されていることが知られている。また、地球温暖化によって中緯度域の成層が強化されることで、南極周極流の表層循環が変化することも指摘されている。本課題ではチャネルモデルを駆動する偏西風および中緯度の成層の変化に対して、南極周極流域の熱循環がどのように変化するか調べた。数値実験の結果から、偏西風が強化されると亜表層の循環が強化されることが分かった。強化された循環によって亜熱帯の温暖な水塊の極向き輸送量が増大するため、極域海洋が温暖化することが示された。一方、中緯度の成層を変化させた場合、水温の変化が生じるのは中緯度表層に限定されており、南極周極流以南の水温の変化は偏西風を変えた場合と比較して小さかった。この結果は、中緯度の成層の変化は渦活動にそれほど影響を及ぼさず、子午面循環にあまり影響しないためであると考えられる。

 今後はこれらの結果を踏まえて、

・偏西風が強化された場合の子午面循環の三次元的な応答の解明

・中緯度の温暖化が渦活動に影響を及ぼさないメカニズムの解明

を目指して解析を進めていく予定である。

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